学会長就任の挨拶
前川孝昭
Takaaki MAEKAWA
筑波大学農林工学系:農業施設学会会長
前会長長島守正氏の後を受けて、本年8月5日に東京農工大学農学部で開催された農業施設学会の総会で会長就任を承認され、1997・1998年度の2年間、その重責を担うことになりました。
日本の農業および食料生産は、これをとりまく状況が農業者やこれを支える研究者、行政ならびに産業界にとって厳しい時代となっています。一方、これらは人口問題や地球環境保全などのグローバルな視点で考えると、人間の生存にとって21世紀には重要な産業となることは衆目の一致するところです。Agricultureにはその語源から見て生物生産の中に人類の文化の開発と発展の概念が含まれております。21世紀にはこの価値観が農林水産業および食品産業にも問われ、農学は単なる物質生産など技術的問題解決のみにとどまることなく、哲学や倫理を含む文化的問題をも考察せぎるをえません。
農業施設は生産と流通のインターフェイスとして農業生産および食料生産に大きく貢献しており、マスプロタクションの要求に大きな役割を演じていくはずです。平成4年6月に公表された、今後の農業政策の展開方向を示す「新しい食料・農業・農村政策の方向」では、土地利用型農業と高付加価値化農業を志向する経営体の育成と展開がその中心課題であり、農業施設研究の役割は大きくなっています。農業施設学会が今までに開催したシンポジウムでも、低コスト農業や資源・エネルギー問題のテーマを取り上げており、投稿論文にもこれらに関わる論文が多くなってきています。また、本年9月末から10月初めに開催される本学会の秋季海外シンポジウムの課題は、先の新政策をさらに先取りした「持続的農業および、食料システム」であり、米国州立ハワイ大学バイオシステム工学科の協力をえて実施されます。さらに、長島前会長が特に力を入れていたCIGR2000年記念国際会議(日本農業工学会主催、於筑波大学)では農業・食料生産システムや環境問題について広範囲に、かつ多角度から見た議論がなされると思われます。
農業施設学会は30年前に研究会から発足した学術団体であります。その推進役の一人であった故森野一高教授は「農業施設とは空間の機能化されたものであり、農業施設学は空間の機能化に関する学問である」とその著書に定義し、生産システムと環境を包含した考え方がすでに導入されています。空間の機能化には農業施設の内側だけでなく外側が関係すると考えると、研究すべき範囲は非常に広くなります。また、本学会の元会長であった森嶋博教授は「農業施設の大きな投割の一つとして、生産と流通の場における情報の伝達がある」と述べていた記憶があります。日本の農業生産は村落中心の生産方式と規模拡大を図る新経営体方式との混成の構造的発展への転換期にさしかかっていると考えられます。いずれにせよ、農業施設には農業・食料生産の場で生産技術および情報の確保が必要なので、これらに関わる研究や開発はますます重要で研究者・技術者の層の厚みを増す必要があります。
会長としての私見は上述のとおりでありますが、農業施設学の重要性と今後の学会の発展を期すために、
1.農業者を含む産・官・学の連携強化
2.会月数の拡大と若手研究者の育成
3.研究レベルの底上げと裾野の拡大
の3点を重要課題として掲げ、会員諸氏並びに役員の方々の御協力を頂きながら、学会の発展に微力を尽くしたいと考えております。
農業施設学会