農業施設28巻3号
1997.12,123〜124
巻頭言:

学会の更なる活性化を願って

伊藤和彦

農業施設学会副会長

 この度、農業施設学会副会長に就任しました。1997・1998年度の2年間、前川孝昭学会長を補佐してまいります。もとより微力ですので、“補佐する”などと申し上げることは不遜とも思いますが、学会の発展のために全力を注ぎたいと思いますのでどうぞ宜しくお願い致します。

 皆様ご承知のように、農業施設学会は前身の農業施設研究会が発足した1970年から数えて2000年には創立30周年の節目の年を迎えます。人間も30歳にもなると自立した1人の人間として周囲から認められ、これまで歩んできた歴史がにじみ出る“顔つき”になると言われております。本学会の30年間を振り返ると色々な積み重ねによって顔も変化してきました。10年間刻みで見てみますと最初の10年間は設立当初の熱気を感じる生きの良い時期であり、会員の学会に対する考え方も多くの共通項をもっており、コマで喩えれば回り始めで軸が直立した時期であったと考えられます。次の10年間は人間に置き換えれば、青春期であり、体は大きくなるが、多少悩みの出る時期であることを否めません。農業施設学会とは? 農業施設とは?というこれまで頭に浮かばなかったことが真剣に検討される時期でした。『人は悩んで大きくなった』と言う言葉(たしかコマーシャルにも出ていたように記憶しているが)があるように学会も創立20年を迎えて、向かうべき方向と手法等について真剣に考えた時期がありました。そして、関連学会との連携を模索した時期でもあります。さて、その後の10年はどうでしょうか。以前に比較して、悩みが少なくなったとは思えません。会員の所属分野は設立当初に比較して広くなり、このことは学会にとって素晴らしいことであると同時に、学会の性格と目指す方向が拡散した事は否めません。当学会の基盤となっている、米麦調製施設、酪農・畜産施設、園芸施設等を取り巻く環境は大きく変化し、これまでのように施設の数と規模が右肩上がりに増加する時代は終わり、内容の高度化が問われ、これまで強く意識されていなかった環境との調和・共生を実現するための方策を確立することが大きな命題になっております。今後の学会の進むべき道として学会を取り巻く情勢変化をいち早く察知し、先導的に行動する必要があります。
 ここで、一つ提案をしたいと考えます。それは本学会が確固たる独自性(唯我独尊ではない)を確立し、先見性を発揮することです。会員数が比較的少ないことを利点として、関係する分野が抱えている問題を掘り起こし、解決策を提示する必要があります。生産の現場には解決しなければならない大小の多くの問題があります。例えば、技術的に完成した農業施設と多くの人が考えている米麦の乾燥調製施設では施設内に多くの技術的に解決しなければならない問題が今でも発生しております。学会を活性化させる必要があるとする意見は多くの学会で言われており、本学会に限った事ではありませんが、学会の活性には学会活動の活性化、特に、学会誌の充実を図るとともに、シンポジウム、研修会を通じて学会内外の多くの人々へ情報提供を行う必要があります。当学会はシンポジウムおよび研修会を意欲的に開催し、活発に活動していると思われます。これに加えて産官に対して積極的な働きかけが必要と思われます。行政に対しては学会からの提言または一歩踏み出して要請を行うことも必要でないでしょうか。一方、産業界、特に1次産業との関連をもっと強める必要があります。多くの学会から発信される提言はともすると『総論』『建前』が強く、具体的に目に見える提言が少なく迫力に欠けるきらいがあります。学会が中心になり、行政および産業界から農業施設に関係する普遍的な研究テーマを引き出し、関係者でチームを作り、期限を切った共同研究を開始しては如何でしょうか。研究テーマについては、学会の参与の方々の意見を十分参考にする必要があります。
 今から30年ほど前に、八郎潟干拓地に設置するカントリーエレベータの基本設計基準を作成することを目的にして共同研究がなされ、これが現在のカントリーエレベータの基礎を築いたものと考えます。この共同研究に参加したメンバーは現在の本学会の中枢として活躍しており、一日2〜3時間の睡眠時間で苦労した仲間として強い絆で結ばれております。是非、若い会員を中心にした共同研究をスタートさせる事を提案します。
 付け加えて述べたいのは、学会および学会員は自信を持って行動する事です。農業施設学会は今後とも農業(生産から流通・加工を含めた幅広い意味)との繋がりを密接にして、食糧生産に不可欠な施設関連を対象とする学会であり、その存在価値はますます増加するものと信じております。最近の一般的な風潮として、反科学、反技術の声が聞こえて来ます。反省するところは反省する必要がありますが、情緒的、感情的な声に右往左往して本質を見失うことは後世において非難されると予想します。農業施設学会の本質を見失う事なく学会の発展に努力していこうではありませんか。


農業施設学会