農業施設30巻4号
2000.3,396-399
学会ニュース:

「学会におけるホームページの活用と可能性」

ホームページワーキンググループ
佐瀬勘紀・奥島里美・木村俊範
向弘之・森山英樹・山口智治

1.はじめに
 1998年度第2回常任理事会において、各委員会の代表からなるホームページワーキンググループが組織され、会長から「ホームページの活用と運用についてのビジョン」の検討を諮問された。ワーキンググループは、1999年5月に答申を会長に提出したが、本稿は答申内容のうち、ホームページ(以下、HPと略す)の活用面を中心に報告するものである。本稿は各節を委員1〜2名で分担し、ワーキンググループで検討の上取りまとめたもので、そのほとんどはe-mailを活用して行われた。

 インターネットを利用した情報伝達は益々増大しており、その社会的重要性も増している。学会がHPやe-mailアドレスを有するのは常識ですらある。学会の発展のための戦略的手段と位置づけている学会もある。いうまでもなくHPは、最新の情報を分かり易く、広範囲に、しかも、瞬時に伝達できるという特長を有する。ユーザ側からすれば、目的の情報を手軽に、比較的安価に入手できるという利便性がある。また、情報の検索や絞込みなども可能である。このような特性は、学会活動の活性化、国際化、PR、会員サービスなどに大きく貢献する可能性を秘めているといえる。今後、学会サービスの一部がHPに移行することは必至である。
 本学会のHPは1996年に開設され、運用を続けているが、学会の総合的視点から、あるいは、各活動分野の視点からHPをどのように活用していくかの議論はされていない。これまでは、庶務委員会の先見性やリーダーシップ、ボランティア的努力によって運営されているといっても過言ではない。HPを長期に効果的に活用するためには、どのような情報をどのような形で発信するのか、また、どのように運用していくかの議論が必要である。本学会の規模はそれほど大きくなく、人材や予算は限られており、運用に当たっての制約は少なくない。しかし、HPの設計や運用の仕方によっては、より大きな学会と同等の機能や効果を発揮させることも不可能ではない。

2.学会のHPの現状
 本学会のHPは、新規会員の獲得、会員への迅速な情報伝達等を目的として、1996年7月に農水省・農林水産研究情報センタのサーバを利用して開設された(アドレスは、http://www.sasj.org/ )。和文と英文の表示を選択できるが、一部の内容は和文に限られている。和文と英文の両方で表示されるのは、学会の概要、行事予定の一部、学会誌目次と論文要旨(要旨は13巻以降のみ)、各委員会名簿などである。入会案内、大会発表課題と要旨、賛助会員名簿、会則などは、和文のみの情報提供となっている。
 これまでの3年間のトップページへのアクセス件数は約9,200件(2000年3月現在、平均で6〜7件/日)であるが、サーチエンジン等を経由した下層ページへの直接アクセス(特に論文要旨へ)は120件/日程度ある。海外からのアクセスが全体の2割を占める点は注目に値する。これまでのHP経由の新規入会は28件(正会員12、学生会員14、賛助会員1、購読会員1)あり、論文請求や著者連絡先の問合せや、会議情報等も国内外から27件寄せられている。

3.活用分野と可能性
3.1 学会の紹介
 HPの大きな目的の一つは、非会員に対し学会の存在をアピールし、会員数の拡大を図ることにある。このため、学会活動の紹介や入会案内は不可欠であり、非会員を対象にした懇切・丁寧なものでなければならない。掲載内容の構成は以下のものが考えられるが、定期的な更新が必要である。
 ・学会長からのメッセージ
 ・学会活動の概要
 ・会員数・構成(所属機関・年齢層別)
 ・会則・規程・規則
 ・委員会構成・役員名簿
 ・学会のこれまでの歩み(歴史)

3.2 会員宛のお知らせ
 会員宛に「お知らせ」として通知する内容には、下記のようなものがある。
 ・大会、シンポジウム、セミナーなどの開催通知
 ・関連する他学会の行事情報
 ・その他(出版案内、学会賞推薦依頼、会費納入督促など)
 従来の通知手段としては、学会誌巻頭への掲載やダイレクトメールによる方法が用いられてきた。しかし、学会誌は年4回の発行であり、迅速な情報伝達は不可能である。また、ダイレクトメールは経費や労力が多大となり、その利用は限られる。HPによる通知は、迅速性と低経費という点で優れている。ただし、利用者が自ら閲覧することが前提であるから、通知の伝達は確実とはいえない。確実性という点では、e-mailの方が優れている。

3.3 学会誌記事の掲載
 研究発表会やシンポジウムの開催と同様に、学会誌の発行は学会活動の柱の一つである。しかし、本学会の学会誌は、会員以外には閲覧することが容易ではない。会員にとっても、入会以前に発行された学会誌の閲覧は困難である。購読会員となっている大学図書館は国内13の大学のみであり、公的研究機関についても21機関に過ぎない。農業施設関連の講座を持つ大学の図書館、あるいは、関連研究室のある研究機関においても、必ずしも閲覧できない現状にある。
 HPへの学会誌目次や論文要旨の掲載は、学会誌の存在およびその内容を広く知らしめることになり、正・学生会員や購読会員の拡大につながるものと考えられる。また、既刊学会誌の目次をまとめてHPに掲載しておけば、会員にとっても過去の論文の検索などに便利である。すでに現行のHPには、目次および論文・資料の要旨を、和文・英文とも掲載しており、これらの情報は頻繁にアクセスされている。
 学会誌には、論文・資料の他、論説(巻頭言、随想、総説を含む)、書評、大会・シンポジウム講演要旨、会告(お知らせ、本会記事を含む)などの記事があり、これらの記事について、今後どの範囲・内容までHPに掲載していくかが問題となろう。
 学会誌記事のHPへの掲載に伴って解決すべき問題点としては、複写請求や著者連絡先の問合せへの対応がある。これらの問合せは、現在までも国内外からしばしばHP管理者へ寄せられている。論文複写請求に学会がサービスとして対応するには、労力の問題の他、学会協著作権協議会に一定の料金を納める必要があること、料金設定や受領の方法など解決すべき問題が多い。JICSTの文献複写サービスの紹介や、将来的には学術情報センターの「電子図書館」にリンクする対応を採ることも、一つの解決方法ではあるが、できれば請求者側にできるだけ便利な方法での対応を行い、会員数の拡大につなげていきたいものである。
 また、将来的には、論文・資料の全文をHPに掲載していくことも考えられる。カラー写真の掲載がコスト的に問題にならないことや、HPが音声や動画の配信も可能であることを利用すれば、多くのカラー写真、音や動画映像を含む報告も作成可能である。単に誌面のHPへの転載に留まらない可能性がある。著者側でHP掲載を前提に原稿が作成され、ファイルの形態での提供があれば、掲載する際のHP管理者の労力負担は少ない。全文掲載になれば、複写請求への対応も不要になる。現時点においても、著者の希望があったり、協力が得られる報告については、全文掲載を試行しても良いと思われる。

3.4 出版物案内
 ハンドブックや用語集などの書籍の宣伝にHPを利用できる。また、学会誌、大会講演要旨集、シンポジウム・セミナー資料などについても、資料の概要とともに残部の通知にも利用できる。入会後の年数が短かったり、行事に参加できなかった会員の中には、これらの入手を希望する会員も少なくない。

3.5 会員の入会受付・変更届・会費の徴収
 入会や会員情報の変更届の窓口をHP上に設け、24時間利用できるようにすることは、利用者にとって利便性が高い。一方、入力データはそのまま会員データベースにコピーできるため、学会事務局にとっても、簡易で確実な管理が可能となる。一方、会費の徴収や未納者への督促は財務委員会の負担の一つである。資料販売や行事参加費などの授受と併せ、クレジットカードによるHP上でのオンライン決済が導入できれば、大幅な改善が期待される。

3.6 大会・シンポジウム・セミナー
 HPによる大会、シンポジウム、セミナーなどの学会行事の開催通知は、迅速性と更新のし易さという点において、3ヶ月毎にしか発刊されない学会誌に優る。一方、学会誌は会員にのみの配布であるが、HPは国際的な広がりも含めて、非会員である一般にも情報伝達が可能である。
 さらに、HP上で参加申込みの受付を行えば、参加者にとって便利であるし、受付側にとっても参加者名簿の作成などが容易かつ確実に行える利点がある。国際学会や他学会では、講演エントリー、要旨原稿受付、参加申込みなどの機能をHPに持たせた例も多くなっている。行事開催の通知、参加手続きを一元化して運営作業の合理化を図れる可能性は大きい。
 また、大会に関連して、HP上で研究発表会を開催することが考えられる。現状では、本学会の大会は年1回のみであり、また、関東在住の会員数が多いことから、2年に一度は関東地方で開催されることが慣例となっている。これでは地方在住の会員に十分な研究発表の場を提供できているとはいい難く、主たる発表の場を支部会のある関連他学会においている地方会員も相当数になるとみられる。HP上での研究発表会の開催は、旅費不足などで参加できない地方会員にも、研究発表の場を提供することになる。また、それをそのまま研究情報のデータベースとして活用していくことも容易である。
 シンポジウムやセミナーについては、時宜を得たテーマで開催されるにもかかわらず、参加者は必ずしも多くはない。作成される資料も、参加者以外には入手が困難である。これらの資料をHP上に掲載・保管していけば、参加者以外の会員にも、広く利用されるものと考えられ、会議開催の効果をより高めることができる。

3.7 国際化への対応
 すでに本学会のHPの一部は英文化されているが、より一層の充実が国際的視野から不可欠である。正確で豊富な英文情報が好ましいが、一方で、労力や経費がかさむことも否定できない。また、英文による問合せへの対処も考慮しておく必要がある。これらの蓄積は、海外での関心や期待を把握できるという点から貴重な情報であり、学会の運営にも貢献すると考えられる。
 会員の国際的活動が活発になっていることから、海外情報の掲載も有用であろう。特に、速報性が高い場合には有益である。

3.8 他学会との交流
 他学会との交流で最も手軽な方法は、HPの相互リンクである。本学会のHPは、他のHPからも見られるようにリンクを許可している。また、他の関連HPへのリンクも掲載している(学会8、大学7、公的研究機関10、その他7)。
 農業施設に関連する会議や行事など、速報性を要する記事の掲載も交流の促進に望まれる。相互の情報提供が必要であり、依頼文書などのやりとりが自動的にできるようなシステムが望まれる。
 他学会との交流の一方法として、HP上でワークショップを開催することも考えられる。手軽に発表・情報交換や議論の行える場として活用されれば、そのメリットは大きいものと期待される。

3.9 データベースとリンク
 本学会関連でデータベース化して保存し、HP上で参照できるようにしておくのが望ましい情報は、次のようなものがある。
 ・会員・賛助会員情報(e-mailアドレスなど)
 ・学会誌論文・資料
 ・大会研究発表要旨
 ・セミナー・シンポジウム資料
 ・新しい施設・装置(学会誌の技術賞梗概、新施設紹介、今現場ではに相当)
 ・実験・計測マニュアル(学会誌の講座に相当)
 ・専門解説・用語(ハンドブック、用語集など)
 一方、学会が情報を管理するのではなく、すでに他機関から提供されている情報にリンクして、情報の所在を示す方が効率的な場合もある。このようなリンクを利用した情報提供としては下記が挙げられる。
 ・関連研究機関(研究テーマ、所在地など)
 ・関連法規(環境・建築関係法規など)
 ・統計情報(設置面積・生産統計、農水省統計など)
 ・資材・装置・計測器等のメーカ

3.10 自由投稿
 自由投稿の場は、会員その他が単に情報を得るだけではなく投稿もできるという点が、HPの他の機能とは大きく異なる特徴である。これは、学会活動への参加意識や関心を高めることにもつながる。
 自由投稿には目的や用途に応じていくつかの機能があり、呼称も様々であるが、ここでは次のように定義する。「掲示板」は投稿者によって発信された情報を、HPにアクセスした人が自由に閲覧できる場とする。すなわち、学校や職場における掲示板と同様の役割を持つものである。基本的に、掲示後の情報交換は個人間で行われ、その過程はHP上には掲示されない。一方、「フォーラム」(公開討論会の意、会議室と呼ぶ場合もある)は、ある特定の話題に関心を持つ者が自由に討論を行う場である。個々の発言はHP上に順次公開され、議論が進行する。「メーリングリスト(ML)」は、複数のe-mailアドレスを一つのアドレスに登録したもので、共通の関心事項を持つ者がグループを作り、e-mailで情報交換を行う場合に用いられる。MLはHP上のフォーラムに似た特性を持つが、登録者のみにしかe-mailは配信されず、HPとは独立したシステムである。
 本学会のHPは、開設当初は掲示板を設置していたが、利用頻度が高くないので閉鎖されたという経緯がある。現在のところ、他学会においても掲示板やフォーラムを設置しているHPは少ないが、一部にMLの内容をHPに転載している学会もある。
 掲示板は、シンポジウムなどの開催案内、新刊案内、その他の新しい情報の案内など、会員にとって有益な情報を通知できる。フォーラムでは、特定のテーマについて地理的・時間的な制約なく議論することができ、特定分野の研究を加速させることが期待できる。シンポジウム開催後に、議論を継続する場合や、短期間に広く意見を収集する場合にも有効である。さらには、学会の運営や改革に関する議論にも活用できる。  自由投稿は、その性格上、問題がないわけではない。私的・主観的な発言や商業主義に偏った投稿など、学会活動に不適切な情報が掲載される可能性がある。したがって、投稿者の署名義務や管理者による投稿内容の定期的チェックなどが必要である。

4.おわりに
 本学会は、農業施設の研究と開発利用を推進し、その知識の向上と技術普及を図ることを目的としている。農業施設に関する情報を広くHPに掲載し、会員はもとより、非会員にも提供していくことは、本学会の目的とも合致する。特に、若手研究者や学生のHPの利用は日常化しており、これらの育成にも大きく貢献するはずである。ただし、会員と非会員とでは、HPで得られる情報に一定の区別が必要かもしれない。
 本稿は、今後益々重要性が高まると考えられる学会のHPについて、総合的観点、あるいは、各活動分野の視点から、その活用と可能性を多角的に検討したものである。多くのアイデアや改善案を提案しているが、可能性の端緒を示すに留まっている。一方、有用で効果的なHPの構築・運用のためには、そのための体制を整えることも必要である。検討のほとんどはe-mail上で行われたものであり、議論がかみ合わない、意見が出にくいなど、文字のみの情報交換による困難性が部分的に表れていることも否定できない。
 本稿が、学会のHPに対する会員の関心や意識を高め、HPの改善や発展に寄与することを期待したい。




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