農業施設24巻1号
1993.7,15〜20
論文:

メタン発酵システムの設計・開発に関する研究(2)
−流動床型メタン発酵槽の動力学的評価−

北村豊・前川孝昭

要 旨

 酢酸を基質とする合成廃水を投入して、メタン発酵プロセスのみで進行するように制御した流動床型メタン発酵槽について、有機物負荷(LVS)や希釈率(D=1/HRT)をそれぞれ3系列設けて実験を行った。その結果、0.38(/day)以下の希釈率で操作された流動床型メタン発酵槽は、85%以上の基質除去率を示したが、希釈率が0.38を越えると汚泥滞留時間(SRT)は10日以下にまで減少し、基質除去率は低下した。菌体の保有能力の指標であるSRTの減少は、希釈率操作の増加による担体保有菌体濃度の減少と顕濁液中菌体濃度の増加の結果であった。一方、流動床型メタン発酵槽に適用できるように展開した動力学モデルを用いて実験データを検証した結果、求められたメタン菌の増殖定数ならびに動力学定数により、流動床型メタン発酵槽は、基質の消費や増殖の活性が小さい菌体ながら、それを大量に保有することによって基質消費速度を維持して、安定した処理能力を発揮することが確認された。以上の結果から、消費・増殖活性の小さなメタン菌であっても、希釈率の操作の影響を受けない、菌体の大量の保有方法の開発により、発酵プロセスの高速化が可能であることが示された。

キーワード:メタン発酵, 流動床, 希釈率, SRT, 動力学モデル, 増殖定数, 動力学的定数


農業施設学会