農業施設32巻4号
2002.3, 171〜176
論文:

酵素による堆肥中のフィチン酸の分解

郝桂玲・ 院多本華夫・前川 孝昭・西尾道徳

要 旨

 フィチン酸に組みこまれたリンは、とくに穀類や豆類では全リンの50〜80%を占めている。しかし、この物質は難分解性で、非反すう動物ではその大部分が未消化のまま排泄されるため、リンの栄養素要求量を満たすことを目的として、飼料に無機リン酸塩を添加している。しかし、飼料原料中の無機リンとフィチン態リンの多くが排出され、環境汚染の一因となっている。最近、フィチン酸を分解するフィターゼを飼料に添加してフィチン酸のリンを無機化させ、無機リン酸塩の添加を削減する飼養技術が普及し始めている。この技術が普及すると、非反すう動物のふん中の無機リン酸塩量が減少し、そのリン酸肥料効果が大きく減退すると予想される。
 本研究では、市販のフィターゼを牛ふん堆肥、豚ぷん堆肥、鶏ふん堆肥及び稲わらに添加し、試料のフィチン酸からどの程度リンを遊離させ、有効化させることができるかを検討した。
 試料にフィターゼを1.25U/g添加し、55℃で16時間インキュベートしたことにより、試料中のフィチン酸から遊離した無機リンは、フィターゼ添加前の試料に存在した無機リンと比べて、牛ふん堆肥、豚ぷん堆肥、鶏ふん堆肥、稲わらでそれぞれ14.3、13.6、9.15、46.2%増加した。 このように、フィターゼを添加することにより、家畜ふん堆肥や稲わらに含まれているフィチン酸を加水分解させ、その肥料効果を高める可能性が示された。

キーワード: フィチン酸、フィターゼ、堆肥、稲わら


農業施設学会