要 旨
高速度メタン発酵を実現するために、メタン菌細胞の栄養元素の要求量を知ることが重要である。本研究では正確なメタン菌細胞中の微量金属元素の測定法を確立するために細胞の洗浄方法を検討した。遊離陽イオン並びに残留培地をメタン細菌の表面から取り除くために,4種の、すなわち蒸留水、生理塩水、燐酸塩緩衝液及びEDTA混合液(EDTAと燐酸塩との混合液)を洗浄液としてメタン細菌ペレットの洗浄を行った。洗浄したメタン菌細胞を湿式分解法で前処理し、ICP-MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer )を用いてメタン細菌の微量金属イオン含有量を測定し、比較した。供試洗浄剤を用いた洗浄結果、細胞内イオン含有量計測値の変動率の最も大きい洗浄液は水であり、その変動率の最も少ないものは燐酸緩衝液であった。更に原子間力顕微鏡を用いて洗浄した細胞を検鏡した結果、細胞の凹みと細胞破壊の現象が見られた。この細胞破壊の程度は水を洗浄液とした場合、最も大きかった。また、細胞洗浄における誤差は主に細胞の破壊に起因することが明らかになった。次に細胞破壊の現象を防ぐために、細菌培養液にグルタルアルデヒド溶液を加え、軽く固定化してから細胞サンプルを遠心分離・洗浄する方法を試みた。この場合、水を用いた3回洗浄においても細胞の破壊がほとんど発生しなかった。この細胞洗浄方法は細胞の破壊に由来する誤差を有効に防ぐ事ができ、細胞の微量金属元素分析の再現性を改善することが期待される方法であると考えられる。キーワード: 微量金属、メタン細菌、ICP-MS、溶菌、洗浄効果、原子間力顕微鏡