農業施設34巻2号
2003.9, 143〜149
論文:

異なる糞尿処理方式をもつ北海道の酪農生産システムの
経営的収益性・投入化石エネルギーおよび窒素負荷からみた評価

猫本健司・干場信司・河上博美・森田茂・ 池口厚男

要 旨

 畜産における環境問題の発生を少なくするために,様々な糞尿処理システムが導入されている。本来,糞尿処理の目的は農業の自然循環機能を生かすことであるが,近年の糞尿処理システムの中には,窒素化合物を少なからず大気中へ放出させたり,多量のエネルギーを要する場合もある。このため,糞尿処理システムの評価には,環境調和的視点を加味した総合的な指標が必要であると考えられる。そこで本研究では3つの複合的指標からなる2つの評価式;[投エネ/所得]比と[窒素負荷/所得]比を用いて,異なる糞尿処理方式をもつ北海道の3酪農場における酪農経営全体と糞尿処理システムに関する評価を試みた。なお,「投エネ《とは「投入化石エネルギー《の略である。
 A酪農場(国営肥培かんがいシステム)とB酪農場(ハウス乾燥撹拌処理システム)およびC酪農場(慣行的な堆肥処理システム)の糞尿処理システムにおける[投エネ(糞尿処理)/所得]比はそれぞれ65, 17, 13 [MJ/1,000yen]であり,[窒素負荷(糞尿処理)/所得]比はそれぞれ0.07, 0.32, 0.06 [kgN/1,000yen]であった。結果的には比較的新しい糞尿処理システムを採用するAやB酪農場よりも,昔ながらの慣行的な処理を行っているC酪農場の糞尿処理システムの方が,所得あたりの環境負荷は小さかった。このことから,新たな糞尿処理システムにより労力が削減され処理効率が向上したからといって,必ずしも環境負荷が抑制されているわけではないことが,複合的指標による評価によって指摘できる。

キーワード:複合的評価指標,収益性,農業所得,投入化石エネルギー,窒素負荷,糞尿処理システム,[投エネ/所得]比,[窒素負荷/所得]比


農業施設学会