農業施設37巻3号
2006.12、145〜152
論文:

化学肥料代替効果からみた堆肥の農地還元に関する
化石エネルギー的有効還元距離の提案

菱沼竜男・干場信司・加藤博美・森田茂・池口厚男

要 旨

 家畜ふん尿の有効利用として行われている堆肥の農地還元を化石エネルギー的な視点から評価した。ふん尿の堆肥化から輸送、散布作業に要する化石エネルギーと、堆肥に含まれる窒素、リン酸およびカリと等価量の化学肥料の生産、輸送(畜舎−圃場間)、施肥に要する化石エネルギーを比較した。また、堆肥の肥料成分が化石エネルギー的に有効となる限界の輸送距離の指標として、化石エネルギー的有効還元距離を提案した。
 化石エネルギー的有効還元距離の検討事例として、経産牛100頭、育成牛20頭を飼養する酪農家を仮定し堆肥の農地還元を評価した。結果として、堆肥化処理と堆肥散布に投入された化石エネルギーは159GJであった。堆肥の化学肥料等価エネルギーは475GJであった。また、酪農家での堆肥化処理・利用システムの化石エネルギー的有効還元距離は約20kmであった。したがって、仮定した酪農家では、堆肥の農地還元のための輸送が20km以内であれば堆肥の肥料成分は化石エネルギー的に有効であることがわかった。
 この検討事例から、化石エネルギー的有効還元距離は、堆肥化処理における投入化石エネルギーや輸送に投入される化石エネルギーが考慮でき、堆肥の農地還元に伴う化学肥料の代替効果を化石エネルギー的に評価する指標として利用できることを示した。

キーワード: 家畜ふん尿、農地還元、輸送、化石エネルギー、評価


農業施設学会