農業施設29巻1号
1998.6,33
セミナー講演要旨:
HACCPシステム
−危害分析に基づく衛生管理手法−
東京都立衛生研究所 小久保彌太郎
最近、新しい食品の衛生管理法としてHACCPシステムが注目されている。本来は、微生物学的安全性を確保するために開発されたが、現在では化学的残留物質あるいは異物混入防止にも使用できる最も合理的な食品の衛生管理のための手法として国際的にも認められている。わが国では行政的にその積極的導入が奨励され、このシステムを取り入れた総合衛生管理製造過程と呼称する承認制度が一部の食品を対象に施行されており、食品生産者も強い関心を示している。このシステムは、危害分析(Hazard Analysis:HA)と重要管理点(Critical Control Point:CCP)の2つを組み合わせて食品の安全性確保を目的としており、従来の食品の衛生管理や監視が最終製品の監視とランダム検査に重点をおいていたのに対して、工程監視による管理に転換した事故予防システムである。その適用は、コーデックス委員会が提示したガイドラインに従って、危害分析CCP、管理基準、モニタリング方法,改善措置,検証方法および記録の維持管理の7基本原則を組み込んだ12手順により行う。これらの原則のうち、特に危害分析はHACCPシステムを導入する時の最初の重要なステップで、予め当該食品の原材料から最終製品の消費に至る過程で発生する可能性のあるヒトの健康に有害な危害を確認し、その制御措置を明らかにすることであり、広範囲の情報やデータを収集して、5つの手順に従って的確且つ十分に行う必要がある。日常の衛生管理は、危害分析の結果を集約した危害リストに基づいて作成したHACCPプランにより機械的に行い,特定されたCCPで計画的に、しかもできるだけ頻繁に管理基準をモニタリングして、そのデータを決められた文書作成要領に従って記録し,以後の衛生管理に役立てる。モニタリング方法は、誰にでも容易に実施でき、特別な技術および特殊な装置や設備を必要としないように設定し、手間と時間のかかる微生物検査は通常行わない。HACCPシステムの導入に当たっては、施設・設備、機械・器具の保守管理、食品原材料、中間製品および最終製品の保管、使用水、鼠族・昆虫対策、従業員の健康管理および衛生教育、試験検査などの一般的衛生管理プログラムといわれる事項が確実に実施されていることが前提条件となる。
農業施設学会