1.予測微生物学とは何か
食品の品質と安全性のため変敗菌・腐敗菌及び病原菌の食品中での維持をこれらの菌の情報を利用して予測する技術で、さまぎまな条件に対応した実験データから菌の推移のパターンを数式化、モデル化してユーザーが利用しやすいコンピュータソフトを提供することを目的とする。その急速な発展の背景には(1)食形態の変化、(2)食品媒介疾病の増加、(3)情報科学技術の進歩、がある。2.予測微生物研究の概要
対象菌を最適培地に接種し、温度などの要因を条件として設定し経時的に菌数を測定、実験データから菌の挙動を表すモデル式を求め、文献値や接種実験によってその適合性を検証し、これをコンピュータソフトとして利用できるようにする。実用化されたソフトには英国農業水産食糧省による大学と研究機関の共同計画の成果である"フードマイクロモデル"と、米国農務省の研究グループによる"病原菌モデル化プログラム"がある。3.食品の安全性確保への予測微生物学の応用
食品関係者には健康障害の発生のリスクを最低に押さえていくことが求められ、それには現時点で有害菌について最も信頼性のある情報を的確に把握し利用していくことが必要となる。予測微生物学の応用分野は(1)新製品及びプロセスのデザインの最適化、(2)HACCPにおけるCCPの確認と微生物基準の設定、(3)食品の品質保持期間の設定、(4)食品取り扱い者の教育などが考えられる。
食品規格などで病原菌陰性の場合の安全対策はこの菌が存在するとして、貯蔵流通過程で増殖しない実現可能な条件の組合せを選び製品に通用することで、予測モデルはそのために必要な情報を提供する。4.実用技術としての今後の方向と課題
現在の予測ソフトから待られる情報は未だ不十分で、今後対象菌の種類と要因の範囲を拡大する必要があり、また予測の信碩限界をユーザーに伝える必要がある。さらに新しい情報を適切にモデルに組入れていくことが必要となる。最近病原菌によるリスクの定量的アセスメントへの動きが始まっており、この分野の研究が進展すれば予測微生物学と組合わせることで食品の安全性についてより信頼度の高い情報が提供できることになり、食品の品質と安全性についての情報源として予測微生物学は利用価値の高いものに成長していくと考えられる。