農業施設29巻1号
1998.6,33
セミナー講演要旨:

食中毒の発生動向と食品の衛生管理の重要性

麻布大学環境保健学部 丸山務

 わが国で発生する食中毒は医師の診定のあったものについては食品衛生法によって保健所への届出義務があり、これらの集計は厚生省によって「全国食中毒統計」として公表される仕組みになっている。この統計は世界的にも精度の高いものであり、1950年代から現在まで起因物質や発生場所などの内容の変遷を読み取る事ができる。発生数については1996年までは事件数と死亡者数は減少したが患者数は過去50年間あまり変化がない。さらに、食中毒全体の大部分を占める細菌性はO157やサルモネラの新しい血清型の出現によって増加の兆しさえみられる。
 食中毒の発生は食料の原材料の生産から食品の製造・加工・流通・保存・販売・消費にわたるプロセスのどこかに安全性の欠陥があるために生ずることはいうまでもない。食品な安全性はこれまではとかく食品の流れの終末である販売・消費の段階で論ぜられてきたが、食料の生産、流通がますます広域化、複雑化し、また食品製造が工業化している現在、それぞれの段階で科学的な根拠に基づいて責任ある衛生管理を徹底してゆく以外にない。まずは生産の段階であらゆる食材が生で摂取されることと、その原材料からの汚染が拡大することを考慮し、病源菌のない食料を生産しなくてはならない。農産物はもちろん家畜の飼養や魚介類の養殖も人が食べて安全な食品の生産であることを意識すべきである。食品の工業生産は安価で見栄えのする製造も必要ではあるが、経済的利潤の追及のみや消費者の目を欺く行為はこれからは通用しない。食品の安全性確保の第一義的責任は食品製造業者であるというのは世界的な認識である。これら安全確保のための具体的方法としては世界的に普及しつつあるHACCP(危害分析重要管理点)方式による衛生管理システムを実践するのが最も適切である。食品の安全性を最終製品の検査に頼らずに、生産から消費までを客観的に評価できる本システムは現在考えられる最も優れた管理手法である。食品はどの場合でも安全な最優先させる事が食中毒を限り無くゼロに近付ける原則である。


農業施設学会