農業施設30巻1号
1999.6,90
セミナー講演要旨:
培養動物細胞を用いた化学物質の生物評価
岡 修一
私達を取り巻く環境中には、登録されている物質のみでも約2000万種近くの化学物質があり、日常生活において大量に使用され、消費されている。現在、これらの化学物質の生体系に及ぼす影響について、社会的な関心が高まっている。
環境分野における化学物質の分析法としては、液体クロマトグラフィー(LC)やガスクロマトグラフィー(GC)による分離の他、GC/MS、LC/MS等の機器による分析が広く用いられている。近年、これらの分析持術は著しく進歩し、ppt(parts per trillion)レベルの極めて高感度な分析も可能になった。しかし、これらの分析法は単一な成分を分析対象としており、複合的に含有する活性の未知な化合物の分析には適していない。そこで、化学物質の生物に対する総合的な影響を評価するために、生物学的手法を用いた評価が期待されている。生物学的分析法としては、ヒトを含む動物の初代培養細胞や株化した培養細胞を用いるin vitro での分析法の他、ラット、マウス、めだか、ゼブラフィッシュ等を用いるin vivo での分析法がある。
細胞培養は、有用物質の生産、活性物質および毒性物質の評価・検定、実験動物の代替等に用いられており、化学物質のホルモン様作用を培養動物細胞を用いて評価する研究が行われている。即ち、(1)レセプター結合アッセイ (2)レセプター依存性増殖アッセイ (3)レセプター/転写活性測定 等である。その他、培養動物細胞を用いて、化学物質のホルモン様作用の評価指標を確立するために、種々の研究が行われている。
培養細胞を用いる in vitroでの分析法は、簡便に、大量の試料が処理でき、しかも測定に必要な試料の量が極めて少ない等の他、生体のホメオスタシスの影響を除き、純粋に細胞レベルで分析が可能で、ヒトの細胞やレセプターを用いて試験することができるという利点を持つ。しかし、生体内で代謝をうけることによって活性を示す物質については、検出できない等の欠点も持つ。現在、化学物質の生体に及ぼす影響に関して、様々な分野の研究者がそれぞれの立場から調査・解析を行っているが、内分泌作用の関与するこの問題は、生体内のホルモンバランスの維持や生殖機能の調節といった複雑な要因も含み、事実関係の解明までには、相当の時間と科学的研究が必須と考えられる。
農業施設学会