農業施設30巻1号
1999.6,90
セミナー講演要旨:

生分解性プラスチックの研究の動向

常盤豊

 日本におけるプラスチックの焼却処理はダイオキシンの発生と関連してたいへん深刻な状況にある。このような背景のもと、生分解性プラスチックの研究開発が再び盛んになってきている。生分解性プラスチックは、使用後に微生物により分解され、環境への悪い影響を与えない素材である。
 現在工業生産されている生分解性プラスチックは、脂肪族ポリエステルおよび脂肪族ポリエステルにでん粉をブレンドしたものである。脂肪族ポリエステルとしてはポリカプロラクトン(PCL)、ポリプチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸、微生物が作るポリヒドロキシ酪酸(PHB)などが生産されている。それらは、フィルム、容器、シートやビーズ発泡体、繊維や不繊布、釣り糸などに加工されている。1998年にはドイツでポリ乳酸のヨーグルトカップが商品化されている。
 PCLとPHBは、微生物によって速やかに分解される。PBSにアジピン酸を共重合させると生分解性が著しく向上する。最近.ポリ乳酸を直接的分解する種々の微生物が発見されている。糊化でん粉とPCLからのブレンド体は、相構造の制御により耐水性と機械物性の優れたプラスチック素材が得られる。
 さらに、脂肪族ポリエステルの物性を改善するため、脂肪族ポリエステルとナイロンの共重合体が開発されている。共重合体中のナイロン部分も短いブロックに調整することにより、ポリエステルブロックが生分解された後、微生物による分解が可能である。
 一方、汎用プラスチックにエステル結合を導入して生分解性を付与する試みとして、2-メチレン-1,3,6-トリオキソカン(MTC)とビニルモノマー(スチレン、酢酸ビニルなど)を反応させた共重合体が開発されている。この共重合体はリパーゼで分解される。
 最近、生分解性プラスチックの処理方法として、生ごみなどともに堆肥(コンポスト)化することが注目されている。今後は、生分解性プラスチックの環境適合性をさらに高めるため.効率的なコンポスト化の技術開発と得られたコンポストの安全性の研究が重要である。
 現在、それぞれの生分解性プラスチックの機能に適した用途開発は着実に進んでいる。さらに、安全性の検討も進められており、食品容器への展開も盛んになると思われる。通産省は2004年の生分解性プラスチックの使用量を年50万トン程度と試算している。


農業施設学会