農業施設30巻1号
1999.6,91
セミナー講演要旨:
バイオアッセイによる化学物質の環境リスク評価
内海英雄
有害物質による環境汚染はその対策が遅れるとヒトあるいは地上の生物、生態系に重大な被害をもたらす。とりわけ、残留有機汚染物質は世代を超えて長期間に渡り地球環境中に残留すること、内分泌撹乱化学物質の場合にはその毒性が次世代になって辟在化するなどの問題がある。従って、化学物質の生物・環境への不可を低減させるためには世代を超えた時間軸で捉え、従来とは異なる対策を講じることが要求される。
地球上あるいは環境中にはどの程度の化学物質が存在しているであろうか。Chemical Abstracts によると千万番目の化学物質が我が国の研究者により1990年に登録され、現在では1800万種を超えている。これら合成化学物質に加えて、環境中で種々の化学反応、微生物などによる生合成・分解によって無数の変化体が生じている。更に、塵埃焼却場や水処理場、廃棄物処分場などでは副生成物や浸出物など、今後予測困難な汚染物質が環境中に混入する可能性は一層増大する。一方、化学物質の有害性、安全性に関する情報量は非常に少ない。この理由として、化学物質の有害性を定量的に評価するためには数千万円の費用と2年近い歳月を要することが挙げられる。
有害情報が不足している状況で環境の質的安全性を高めるためには毒性が明らかでない物質や未同定物質についても、生物・環境への有害性不可と汚染状況を的確に評価しその管理が必要となる。この評価系として考えられているのが、簡易生物評価法"e;bio-assay"e;(バイオアッセイ)である。これは、化学薬品の代わりに生物材料を用いて、化学反応の代わりに生物応答を測定し、物質量の代わりにその生物作用量を分析値として評価する方法である。生物作用には医薬品や機能性食品など有益な作用と環境汚染物質のような有害作用がある。環境管理のためのバイオアッセイには複数の化学物質が混在する環境試料についてヒトあるいは生態系への有害性を的確に評価することが望まれる。バイオアッセイの導入は環境の安全性向上に一層寄与するものと期待される。環境管理においてバイオアッセイ「簡易毒性評価法」を適用する意義は長期暴露による慢性毒性・持株毒性物質の総合評価である。しかし、簡易毒性試験は生物個体での毒性発現とは必ずしも相関しないので、データ活用に当たってはこの毒性学的利用眼界に対する慎重な配慮、簡易毒性試験としての眼界に留意して、試験結果を正しく用いる必要がある。
農業施設学会