農業施設30巻1号
1999.6,91
セミナー講演要旨:
近年、これまで認識されることのなかった、日常生活の中に潜む"身近な"内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の氾濫ぶりが指摘されている。実際、大気・水・土壌中には内分泌攪乱作用の疑われるプラスチック原材料や農薬、あるいは植物エステロジェン等が存在しており、それらが食物連鎖を介して生物濃縮されることにより、高濃夏の内分泌撹乱化学物質に我々の体が暴露される危険性は高い。
我が国の水環境は環境基準が設置されて以来、二十有余年経過するにも係わらず、目に見えた改善はみられないばかりか、閉鎖系水域、特に湖沼では依然40%前後を推移し、むしろ悪化している。また、特定化学物質の作用がすでに不可逆的な方向に作用し、次第に修復が困難になりつつあることは、水環境中に生息する多様な生物、魚介類等の雌雄の決定の平衡が崩壊しつつあることから明らかである。
以上のような背景から緊急に解決すべき問題として生態系影響因子の明確な認識と処理手法の確立及びその顕著な低減化が求められている。
最近、光化学処理・超臨界水酸化処理・活性炭吸着処理・微生物分解処理などの内分泌攪乱化学物質の処理技術が報告されている。我々は、高電場発生処理を用いた立体構造改変により内分泌攪乱作用が疑われる合成化学物質を部分分解し、生体内疑似的認識を防御し、生体内で安定するシステムの構築を提案し、現在研究を進めている。具体的には、持に流入排水で問題となっている家庭雑排水、合併浄化槽排水、下水終末処理水、上下道原水の処理の処理プロセスに、開発した高効率高電場処理装置を組み込み、我が国の水環境生態系を早急に修復することを目標とする。これまでの研究では、高電力の電圧・電流・周波数・材質等の選択によりヒドロキシラジカルを適度に発生し、芳香族環の部分分解や開裂を容易に行える知見を得ている。これらの知見を活用し、本研究課題がめざしている学際的アプローチにより、内分泌攪乱化学物質の引き起こす諸問題のより具体的な対策技術が生み出せるものと考えている。
21世紀に向け、生態系と人類が共有できる健全で持続可能な環境を創出するためにも、内分泌攪乱化学物質問題を早急に解決する新たな研究の貢献が期待される。
農業施設学会